きみの背中に全力アタック! @



「あれ、今日はコーヒー?」
 昼食後、健二が飲み物を持って開け放たれた居間に戻ると、先に座っていた佳主馬の飲み物に思わず目が行った。
 最初の頃は麦茶しかなかったこの家だが、先日健二がコーヒー派ということが皆にバレ、今は健二が自分でアイスコーヒーを作って置かせてもらっていた。さすがにほとんど自分しか飲まないのに作ってもらうのは気が引けたのだ。
 そんなアイスコーヒーを自分以外に飲んでいる人物がいる。しかも、その人物が人物で、珍しくて健二は思わず口にだしてしまった。
「うん」
「あ、じゃあミルクとシロップもってくるね」
「いらない」
「えええっ」
 再び台所に戻りかけた健二は、ひっくり返りそうになる。
「…なんでそんなに驚くわけ」
「あ、や。えっと、苦いよ?」
 佳主馬はいくら大人っぽくても十三歳である。明らかにアイスコーヒーよりもコーラの方が似合う。
 が、それを口にするのはさすがにためらわれた。
「言われなくても分かるけど」
「…だよね」
「別にいいし」
 我ながら馬鹿な説明だとは思っていたので素直に反省する。
 言いながら佳主馬は、ためらいもなくそれを一口飲んだ。
「って、あああああ! ほら、ににに苦い! 苦いよ苦い!」
 しかめた顔に思わず盛大にうろたえ叫んでしまえば、何故か背中を向けられた。
「あーっ!」
「……」
 一気に、まるで薬を飲むようにごくごくと飲み干す姿に、思わず健二が悲鳴をあげてしまう。
「……ごちそう、さま」
「い、いえいえ…」


 佳主馬は若干の居心地の悪さを感じつつ思う。
(…まず)
 今日飲んだのは、本当にただの興味本位だったのだ。まさかこのタイミングで健二がやってくるとは思っても居なかったが。
(だって)
 健二がいつも飲むのはブラックのコーヒーだ。癖になってるんだよね、といっていたから。
(…どんな味か気になるじゃん)
 それが、彼が好む味だからとは、言える訳もないのだった。



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最近ゆるい話しかない…(反省)
そしてテーマはコーヒーでGO!脳内BGMにはなんとなくコーヒールン○が流れるわけです

ちなみにタイトルはラブアタックしてるというより、追いつきたくて頑張ってる意味で。