今日も世界は敵だらけ オマケ



「ああ、居た居た。佳主馬くん」
 荷物を運んでいると、外出していた理一に声をかけられた。
「何」
「侘助に、なんかされたんだって?」
 その言葉に佳主馬の体がビクリと反応する。目の前の両親の年齢にも近い親戚は、からかうというよりも何かを優しく待つようにじっと自分を見ている。
「…別に」
 勝手に塩を送られただけだ。その塩は絶対に自分の手でいつか返すと思っていれば、表情に出ていたのか、理一がにこりと笑った。
「なるほどね」
「は?」
「いや、俺も仕返ししておくからさ」
 ひらり、と手を振り軽い動きで理一は身を翻す。いつも通りのとても軽い口調に動作。
 だが。
「――理一おじさんってさ」
 それは完全に独り言のつもりだった。
 しかし、ちゃんとその声は届いたようで、無視されず理一が足を止めて振り返る。穏やかな表情で続きを促されるが、佳主馬は一瞬の判断でその先を飲み込んだ。
「……。なんでもない」
「有難う」
 何も言葉にしていないのに、理一はにやりと笑った。歩き出す男は、侘助と一体どんな会話をするのだろうか。
 佳主馬はふともう一度その背中に声をかけた。
「今日さ、侘助さん健二さんと昼寝してた。健二さん枕にして」
「え、なに?」
 名前が聞こえたからか、健二が奥から顔を出した。
「へぇ」
「仲、よさそうだったし、健二さんを頼りにしてるみたいだった」
 そして本当に理一の姿は視界から消えた。近寄ってきた健二には、なんでもないと手を振りながら、これでひとまず『昨日今日と苛々していた分』くらいは、スッキリ出来るのではないかと思う。
「あれ、理一さんもう行っちゃったの?」
「用があるんじゃない」
「そっか。…って、佳主馬くんもうこんなに終わったの?」
「後で手伝うよ」
「――う。いや、頑張」
「時間なくなるし」
「…宜しくお願い致します」
 項垂れつつもどこか楽しそうにも見える健二を見て、佳主馬は思う。
(俺はまだ子供だし)
 少しくらいは大人の手を借りるのも――本当に大切なところは自分の拳で返すのだからいいだろうと、佳主馬はちゃっかりと思うのだった。



END


BACK 



ちょっと大人の手を上手く借りれた佳主馬と(侘助への仕返ししたさ)、侘助と理一の関係を思ってのコネタでした。
本当どうでもいいコネタですんません…。