今日も木の葉の里は平和です  


「俺、あなたを好きな気持ちなら負けない気がするんですよ!」
「へぇよかったですね」
「本当ですよ! だからつきあってください」
「その理屈でいくと、いつか俺をもっと好きな人がきたら俺はあんたを別れるってことで?」
 職員室で、イルカの隣を陣取りながらわーわー喚く銀髪の上忍の姿は、もうこの場所でも見慣れたものだ。余裕のある者はこの会話を聞いて楽しみ、忙しいものはいつも通りの光景を無視をしている。
 なんせ言われているイルカ本人からして、絶対に横を見ないのだ。
「負けませんよ! 絶対勝ち続けます」
「今はなんとでもいえますよね」
「絶対ったら絶対ですっ」
「あ。受付任務がそろそろなんで、帰ってください」
「はーい」
 カカシは素直に返事をして、それから一度周囲に頭を下げて出て行った。周囲ははっきりいって、この瞬間のために傍にいる。あの上忍からこんな風に接してもらえるなんてと、ほくほくした気持ちになるのだ。それにもともとカカシは上忍の中でも威張らず、高感度も高い。しかも中忍を必死で口説いているのだ。
「お前、たまにはカカシ上忍にも優しくしてやれよ」
「そうよー。頑張ってるじゃない」
「口出ししないでください」
「もう、先生ったら固いんだから」
 イルカの憮然とした受け答えはいつものこと。
 同僚たちは穏やかにイルカをからかいながらも、楽しいひと時を過ごしていたが、職員室でそのことが話題になるように、上忍控え室でもそれは当然話題になる。
「お、帰ってきたか。今日はどうだった?」
「んー。いつも通りよ」
「カカシさんが相手にされる日はくるんですか?」
 ソファに座ったカカシの頭に後ろからのしかかるように、元暗部の仲間が話かけてくる。
「え、相手にはされてるよ」
「は?」
「あの人さ、すっごい照れ屋なんだよ」
「は…?」
 控え室にいた男たち全員がカカシの言い分に目を丸くする。
 どう見ても、どう聞いてもあれは恥ずかしがってる人間の態度ではない。
「目合うとさ、恥ずかしさが一気にくるみたいでいっつも目をそらすの。二人で居るときとかはもっと優しいし、あわてたりしててかわいいよ。見栄っ張りなんだよねぇ」
「…アスマさん」
 元暗部の男は助けを求めるように、カカシと付き合いの深い男の名を呼ぶ。
 アスマはにやにやと楽しそうに、周囲の男たちの顔を見る。
「とうとうお前らも教えられてしまったか」
「んだよっ、知ってたのかよ、お前!」
「アスマさんっ、じゃあまじなんですかっ」
「新たな楽しみと苦しみがお前らをまってるぜ」
 その時、最高にタイミング悪く控え室の扉があけられる。かちっと、いかにも真面目そうな男が中に入ってくる。
「失礼します。アスマ上忍、火影様が先日の報告のことで」
「ああ。わかってるって。今いくよ。そうだ、イルカ」
「はい」
 アスマが指をさす。その先をイルカは疑問を持たずに見た。そこには銀髪の上忍が座っていた。カカシは思わずにこりと笑う。
「!」
 途端にイルカの顔が首筋から赤くなる。何かを言おうとしたらしいが、口からは言葉にならないうめき声が漏れるだけだ。
「んな、なに…何を…っ」
 普段聞いているよりもはるかに力がなく、弱弱しい声だ。むしろかわいらしくさえある。
「ごめんなさい。ルール違反でしたね」
 カカシはさっと立ち上がり、イルカと共に一瞬で姿を消した。
 残されたのは呆然とした上忍ら数名。
「な?」
 アスマはあの二人に興味は無いものの、動揺あらわに立ち尽くしている同僚を見るのは楽しいかもしれないと、新しい遊び道具に思わずにやにやと笑う。


 今日も木の葉の里は、どこか平和で元気で、最高だ。









この後一体どうなるんでしょうか。
つーか、いいの?この里?笑