「おお、すげぇな。紫雲先輩っ」
「夕日上忍とはるよなぁ」
「いや、体だけなら先輩が勝つだろ。露出もなー…天国だよ」
 たまたま受付勤務が男達だけになれば、当然話題はこんなものだ。同じ内勤組でもある紫雲の見事な体の曲線と露出は、毎回男達にとってこれ以上ないほどの癒しとなる。
「夕日上忍は、そもそもこうして見ている時点で――イルカ?」
「う、うわっっ」
 書類の整理をおこなっていたイルカは、突然声をかけられてせっかく綺麗に閉じた中身を床にぶちまけてしまう。
「ぎゃー! 俺の書類っ」
 慌ててそれをかき集めだすイルカを見て、思わず唖然と見ていた同僚達は誰ともなくため息をついた。
「俺さ、たまにコイツこんなに純で平気かよと思うんだけど」
「あー俺も……」
「いやいや。今の話題はイルカにゃまだ早すぎたんだって」
 一応イルカを思ってか、彼らの会話は小声だ。しかし、所詮は狭い受付である。
(聞こえてるっての)
 同僚達の話を聞きながら、イルカはひたすら書類を集めた。
 うみのイルカの人物像としてよく言われるのは、真面目、熱血漢、そして――純情。
(そりゃさ、こっちにだって色々あるんだよ。色々。てか、今の話題程度で早すぎるってのは――俺はアカデミー生以下か!?)
 それでもイルカはそれを口にしない。はっきりいって、そう誤解されている方が、イルカにとっては身の安全に繋がるからだ。
 書類を集め終わってもう一度席に座る。同僚達は再び、先ほどの話題に夢中になっていた。体のどのラインがいいとか、どっちがどういいとか、そんなたわいも無い可愛い話だ。
 イルカだって平均男児だ。ただ圧倒的に女性の体に免疫がない。ただそれだけで。
(だってなぁ…)
 イルカはこっそりとため息をつきつつ、ふと視界に入ったカレンダーで視線を止めた。こんな風にくだらないことで悩めるような、穏やかな日々はきっとあと二日で終わる。
(そうだ。今日明日は早く帰って、たっぷり寝るか)
 それが自分の最大の贅沢だと、イルカは他の男達をよそに、そんなことを真剣に考えていた。




  俺がエロ本も読める十八歳以上だって、
                  お前ら知ってるか?





「んな、っ、なんでっ」
「なんでと言われても。早く終わったものは終わったんですよ」
「ぜ、絶対また部下を置いてきたんだろっ! そうとしか考えられないっ」
 二日後に帰還するはずだったはたけカカシが戻ってきたのは、イルカが受付で『自分の休息日はあと二日』とカウントした直後――その晩だった。
「ひっ」
 はたけカカシは無駄に上忍だ。そして暗部でもあるからか、手段を選ばない。
 ツボを押されたのか、薬を使ったのか。イルカが気づいたときは、両腕を縛られて、下半身を既に剥かれた状態だった。
「んー大丈夫―」
「だい、大丈夫じゃな――ひぃっ、舐めるな、触るなっ」
 片足をぐいと持ち上げられ、まだ萎えているそれに口付けられる。のしかかっていたカカシは一度体を起こし、自分の額宛をゆっくりと、邪魔そうに外した。
 そのままイルカを見下ろし、唇の端をあげる。
「それくらいの力量はありますよ、あいつらに。分身も残してきてるし。俺はそれよりも、イルカ先生の方が心配だったんですよ」
「お、俺の何がっ」
 カカシの指がつつ、っと胸から下腹部をなぞる。
 カカシに触られたことなど、もう数え切れない程ある。だというのに、慣れるどころか、たったそれだけの動作に、怯えるように、反応するように、体を震わしてしまう自分が本当に嫌になる。
「だって、イルカ先生誘惑に弱いし」
「う、ひぅっ」
 誰もしない。
誰も自分などを誘惑などしない。するわけがない。そう声を大にして言いたいが、再び舐められた性器に思わず息を呑んでしまう。体には既に中途半端な熱が溜まってきている。
 忘れもしないが、ここ数年で最悪の思いをしたときは、自分がナルトの変化の技で鼻血を吹いたときだった。それ以外でも、何かと自分が女性と接触したりするだけで、毎回この男は何かをしでかしてくる。
 強い力で性器を揉まれ、空いた手は異様なほど優しく下腹部や内腿を撫でてくる。慣れた体は、それだけでこの先にあるものを強請るように体が震えてしまう。
(ああ、もう嫌だっ)
 自己嫌悪で、ぎゅっと目を瞑る。だがその前に、何か一言は目の前の男に怒鳴るべきだとイルカは気持ちを奮い立たせ、のしかかっている男を睨みつけた。カカシは楽しそうな目で自分を見下ろしている。
「んーっっ」
 口を開いた途端、獣のように口付けられる。驚いて引っ込めた舌はきつく絡め取られ、抜かれるほど強く吸い付かれた。
(ひあ、あ)
 歯茎をなぞるように舐められる。腰の奥に痺れを感じると、それを分かりきっているというように優しく撫でられた。溢れた唾液が頬を伝う。それをどうすることも出来ない。
 撫でる手が少しずつ上にあがり、こねるように乳首を嬲られる。尖ったそこからの鋭い感覚に、体は何度も不規則に跳ねた。酸欠に近い苦しさから、目の前の男の体に思わず爪をたてると、ようやく我が物顔で蹂躙していた舌が抜けた。
「また、誰かに声かけられたりしたんじゃない」
 空気を思い切り吸い込みながら、イルカは頭をぶんぶんと振る。同時に、ぬめりをまとったカカシの指が、後ろへ突き入れられる。
体は既に異様なほど熱い。そして、ぐちゃりとした音。
(げ、外道が…っ)
 深く考えていなかったが、多分、自分が目を覚ます前から、そこも嬲られていたのだろう。こういう悪趣味なことを平気でするのだ。はたけカカシという男は。
「かけられたりしたの?」
 イルカが声を出せる状態ではないことを分かっていたうえで、カカシはもう一度問いかけてくる。
「かけ、られる…かっ」
「本当に? 触られたりもしなかった?」
「ひあっ、あ、あ!」
 強く壁を押すようにぐりぐりと嬲られ、思わず声があがる。そのまま強引に性器を喉まで咥えられる。
「や、やめろっ」
 急激に高められ、思わず声があがる。カカシの熱い口内は、長く器用な舌は、腰が抜けるほど気持ちがいい。だが、それと同じくらい、素直に受け止めることのできない気持ちも襲ってくる。
縛られていることを分かっていて、腕を引っ張った。カカシの掌の上で体をぐちゃぐちゃにされるような感覚に、体が耐えかねている。耐えかねるほど、気持ちがいい。
「離せっ、はなし、てっ」
「なんで?」
「あう。あ、あ、あっ」
 カカシが任務に出ていた期間は七日。
「ひぅ、あーあーっ」
 たったそれだけの期間だというのに、刺激に飢えていたとでもいうように、あっさりと性器は弾けた。
 後ろと同時に嬲られてしまえば、ひとたまりもなかった。
 じゅう、と先端から全てをすいきるようにカカシは口付けたあと、後ろに入れた指をかき回すように動かしたまま、イルカの頬を舐める。過敏になっている体がびくびくと跳ねる。
「うん、いい子にしてた?」
「…、っ」
 羞恥や色々なものが混じり、思わず涙が落ちる。それもカカシが丁寧に舐めとっていく。
「いい子に、してなかったの?」
「し、してましたよっ」
 不穏な色をもった声のトーンに、思わず慌てて答えてしまう。
 はたけカカシに初めて手を出されたのは、十代の頃だ。それ以来ずっと体の関係は続いている。何故カカシが自分にこんなにも絡んでくるのか、はっきりいってよく分からない。きっかけなどは特に何もなかった。ただ全てが突然始まり、そして今もまだ続いている。
「ふーん」
 疑うような声が耳に響いた瞬間、ぐっと入っていた指が突然抜かれ、代わりに質量のあるものがイルカの体内に入ってくる。唐突な挿入だったが、それが何か分からないほど間抜けではなかった。
 声が漏れる。構わず下生えを感じる程しっかりと挿入された。ぐちゃり、と何かが潰れたような音がして、たっぷりと使われていた潤滑剤が少しあふれ出すのを感じる。
「う、あ…っ。苦、し」
「喜んでるのに?」
「苦し、い!」
「案外嘘つき、だよね。イルカ先生」
 カカシの指がぬるぬるになった性器を嬲り、そのまま濡れた手でイルカの腰を掴む。一度思い切り突き上げられ、頭の奥がチカチカとした。
 そのイルカの顔を、楽しそうにカカシが覗き込む。何か言おうと口を開いた瞬間、もう一度深く突かれる。
「あ」
 甲高い声が漏れ、慌てて口を閉じようとしたが無理だった。
何度かゆっくりと、だが深くその行為が繰り返される。背中をかけぬけるのは、痺れるような快感だ。その快感に耐えるすべをイルカはもっていない。
「は、あ、あっ」
 出し入れされるタイミングで、止められない声が漏れる。苦しいほどの質量があるものが、柔らかい肉を抉り、前立腺を嬲るのだ。
「こんなにしてるのに、なんであんた、純に見られるんですかねぇ」
「そんなん、こっちが聞きてえよっ」
 一息で怒鳴るように言い捨てれば、カカシは一瞬動きを止めて口の端をあげた。
「生意気」
「う、あ、あああっ」
「でも、それがいいよね。先生やっぱり、もてるよねぇ」
 がんがんと打ち付けられ、イルカは思わず体を逃げるようにずらす。当然それは許されず、体をぐいっと密着させられ、より深く抉られ、寝ているはずなのに眩暈がした。
「ひぅっ」
 呼吸が浅くなる。
「ほら、エロイよねぇ」
 びしょびしょになっている性器をつかまれ、受け入れている場所を指でなぞられる。イルカは今度こそと、精一杯の意識を集中して、悪態をついた。
「…の、っ」
「え?」
「あんたの、せいだろっ」
(そうだよ)
 全ては、何もかもがカカシのせいだ。
 こんな体になったのも、自分が純に見られてしまうのも。
 自分は、女の裸など見たことがない。気づいた頃から、こうしてカカシとのみセックスをしている。
 一般的にされる猥談や、近づけられる女性の体に過剰反応してしまうのもそのためだ。女性の体に触れる前に、こうして自分はカカシとばっかりこんなことをしているのだ。
 だが、そんなことを知ってか知らずしてか、カカシは一瞬首をかしげるような動作をした後、どこからか紐を取り出した。
「ま。別にいいんですけど」
「いいのかよっ」
「俺は、その方が毎回楽しいし」
「俺は楽しくねぇっ」
 カカシがイルカの目の前で、意味ありげに紐をちらつかせる。非常に嫌な予感がした。
「う、あっ」
「いたっ、痛いっ」
「本当?」
 あっさりと性器の根元を紐で結ばれる。それから嬉しそうに男は笑う。
「じゃあ、はじめよっか」
「っ」
 その顔を見て理解する。最初から、自分に話させたこの七日の間のことを信じるつもりなどなかったのだ。この疑り深い男は。くたくたに嬲った後で、意識が朦朧とし『絶対に嘘がつけない状態』で再度同じことを問いかけてくるのは分かっている。悔しさに、思わず歯を食いしばる。
 いつもそうだ。
 いつも大事なことは、必ずそうして確認してくる。それならば、普段の意識のある自分はなんだというのだ。
「そんな目でみないでよ。ぞくぞくするから」
「変態っ!」
「まぁね」
「う、――あっ、ふあぁ」
 前立腺を擦られ、容赦なく性器もなぶられる。中に受け入れていたことを、今更ながら思い出してしまう。
「変態にされて喜んでる、ってのもいいね、先生」
「あ、ひ、あ、ばっ」
 涙が落ちる。体の中に溜まる快感に、声が止まらなくなる。
 悔しいが、慣れた体は本当に気持ちよく感じてしまうのだ。男の愛撫を、中を蹂躙されることを。性器への直接の愛撫と違い、体の中からくすぶるようにこみ上げてくるその快感は、何度体感しても、どこか底が見えず恐ろしくてたまらない。
「やめ、やめろっ」
「嫌だ」
「あ、あう、う――、あーっ」
「ほら、先生これ好きでしょ?」
 ぐりぐりと押し付けるように腰を回され体が思い切り跳ねる。性器がびくびくと震え、結ばれている痛みがだんだんと酷くなる。
「ああ、ああっ」
「ほら、どうしてほしい? どこがいい?」
 いいでしょ、と耳元で囁かれる。頷きたくなどない。それでも、体は反するように頷いた。
 いい。
 カカシとするセックスは、これ以上ない程気持ちがいい。
 そんなことは、とうにこの男とて分かっているはずだ。いや、心の奥底では分かってなどいない。
(だから)
 結局自分が折れて、頷くしかないのだ。
 どこがいいと再度耳元でとわれ、簡単な言葉で答えれば、集中してそこをそれ以上の行為で嬲られ悲鳴があがる。体の中に快楽が溜まり、それは体を蝕む。苦痛と快楽の合間で、思わずカカシの体に爪を立ててしまうが、もはや気にすることなどできない。
 普通にしてくれ、と言おうとした言葉は相手の口の中に吸い込まれる。ぐちゅぐちゅと口の中を舐められ、容赦なく使われる腰に予感がする。カカシが、自分の性器をこすりつけるように、しごくように動かしている。自分を使って、射精しようとしている。
「いやだ、やだっ、外し、てっ。外してっっ」
 暴れて口付けが解け、思わず叫ぶがカカシは楽しそうに笑うだけだ。腰使いが激しくなり、痺れるような快感が痛みと同時に走る。
「大丈夫。いけるでしょ?」
「やだ、やだいやだっ」
「子供は要らないけど、あんた、孕んだらいいのに」
 カカシがどんな顔をしているのか、見る余裕はなかった。体が震え、カカシの腰が震えた。濃厚にこすり付けるように体の中で射精をされる。全てを吐き出すまで、しっかりと体を押さえつけられ、意識が完全に一度飛んだ。
「ひ、あ、あ――っ!」
 縛られたままの性器から強烈な痛みと、えぐられた場所からの底のない、落ちるような快感に意識が真っ白になる。そして、真っ白になっている中で、カカシに一度だけ聞いたことを思い出した。
 遠い、何かに埋もれてしまっている記憶。多分また、目が覚めたときには忘れてしまっているだろう、僅かな夢のようなもの。
(そう、だ)
 あれも、多分セックスをした後のことだった。
『あんたのことは、好きじゃないよ』
 力強く言い切った後、カカシはしっかりとした声で、遊ぶように、だがどこか子供のように呟いた。
『とっくに通り越して、なんかもうそんなもんじゃないよ』
 真っ黒だ。
 そういって表面上だけ笑った男の目は、いつも酷く飢えている。けれど、自分を映しているとき、僅かにその目が楽しそうだということを、イルカはその時に知った。



 カカシが二回ほど達ってから、ようやく紐は解かれたが、その頃イルカの意識は既に朦朧とし、何もかもがよく分からなかった。過ぎた快楽と、泣きすぎたせいだ。優しく性器を咥えられ導かれた後、多分もう何回か抱かれた。
 時間をかけ刷り込むように快楽を与えられ、止めてくれと泣き叫んでも、底なし沼に沈められるようにカカシの腕は、体は絡み続けた。そして、泣きながらも、同時にその腕を欲しがり続けたのも自分だ。
「あんたは、俺だけ見てればいいんですよ」
『分かってる、分かってるからもっと――』
 思い出したら、あまりのはしたなさに自分の頭を殴りたくなりそうだが、だからこそ多分きっと、働いているときの自分は『真面目』と言われるほど働けるのだ。
 鉛のように体は重く疲れていたはずなのに、ふと唐突に目が覚めた。周囲はまだ暗く、カカシが自分の体にしがみつくようにして眠っている。
 イルカは暫くじっと見つめる。普通なら、カカシはきっとこの程度の視線でも目を覚ましてしまう。
(少し痩せた、な)
 きっと無理をして、任務を早く終わらせ帰ってきたのだろう。こんなことをしなくとも、自分は応じることを知っているけれど、理解できていないのだ。
(ああ、ちくしょう)
 腹が立つ。腹が立つけれど、怒れないし、切ることなどできやしない。自分は確かに、この馬鹿な男を好きなのだ。あんなことも、こんなことも、その辺のエロ本よりも酷いことをされても、なんだかんだで、離れることなど考えもしたことがない。
(それが、なんでわからねぇんだよ、アホ!)
 側に近寄れば、体温を確かに感じる。もう数時間でやってくる明日は、きっとこの疲労が抜けずしんどいはずで、なのに多分また明日も明後日も好き勝手にされるのだろう。明日カカシが休みならば、学校で犯されるかもしれない。
 きっと、『自分達なり』の普通に戻れるのは四日後くらいからだ。
(馬鹿馬鹿、この大馬鹿がっ)
 ぐるぐると体の中では思いながらも、そんな荒れた素振りは全く見せない動作で、イルカはカカシの体に少し触れた。カカシは多分、自分だと分かっているから目を覚まさない。
 イルカが好きな動作は、多分これだ。
 カカシが目を覚まさないことに、多分一番安心する。カカシの感情に許されていること。だから、どんな無理難題も、どこかでもう受け入れてしまっているのかもしれない。
(――いや、毒されるな!)
 変わって欲しいところは確かにあるのだと、イルカはその考えはさすがに否定し、そっと目を瞑る。数時間後のために、少しでも体力を蓄えなくてはいけない。そして、四日後までなんとか頑張り、カカシが落ち着いた頃には、カカシが任務で祝えなかった誕生日を祝おうと決めている。きっと、カカシ自身は全く興味がないだろうし、それならと強請られるものも、きっとこの数日と全く同じものだろうけれど、それでも改めて、ちゃんと自分からそれを伝えたいと思っている。
 そのためにも、この数日間のコトが、あまり酷いものではならないことを真剣に願いながら、イルカは本格的に暖かい場所で眠りに落ちていった。




終われ!








スペースでタイトルを名乗りあげた方にお渡しする、という遊びフリーペーパーでした(笑)
勇者になってくださった方々本当ありがとうございました!!
その割に、なんていうか本当ちょっとした話とエロですんません…
でも楽しかった。今度はもっと趣味丸出しの(?)エロを書きたい。(どんな宣言)
気楽に楽しんで頂ければ幸いな作品です(笑)